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東京地方裁判所 昭和43年(行ク)20号 決定

申請人 王子野戦病院反対共闘会議議長

被申請人 東京都公安委員会

主文

申立人の本件申立てを却下する。

申立費用は、申立人の負担とする。

理由

一、申立人の申請の趣旨及び理由は別紙二記載のとおりである。

二、被申立人の意見は別紙三記載のとおりである。

三、当裁判所の判断

本件疎明によれば、本件集会および集団示威運動の主催団体の中には、申立人の主張する団体のほかに反戦青年委員会が含まれていること、同委員会は、過去においてしばしば公共の安寧秩序を害した他の団体と共斗関係にあること等が推認される。

よつて、本件申立ては行政事件訴訟法二五条三項にいう「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき」に該当するのでこれを却下することとし、申立費用の負担につき民訴法八九条を適用し、主文のとおり決定する。

(裁判官 杉本良吉 中平健吉 岩井俊)

(別紙一 省略)

別紙二

行政処分執行停止申請書

請求の趣旨

申請人の許可申請にかかる昭和四三年四月八日実施の、別紙許可申請書記載の集会及び集団示威運動について、被申請人が昭和四三年四月七日附でなした不許可処分の効力はこれを停止する。

申請費用は被申請人の負担とする。

との裁判を求める。

申請の理由

一、行政処分の存在

申請人は、王子野戦病院反対共斗会議議長として、昭和四三年四月八日、右共斗会議に加盟をしている日本社会党、東京護憲北区会議(略称北区護憲)、原水爆禁止北区会議(略称原水禁)、日本婦人会議北支部、北新会、日本社会主義青年同盟(略称社青同)の団体員を中心に米軍王子野戦病院の設置に反対する意思を表明するため北区王子一丁目柳田公園において集会を実施し、その後北区柳田公園―都電王子二丁目停留所―国電王子駅前―国電ガード下―飛鳥山公園前―明治通り―滝野川二丁目二三番地(紅葉湯)角―滝野川橋―王子新道三叉路―米軍王子野戦病院正門前―王子新道―王子神社まで集団示威運動を行なうため、昭和四三年四月三日、東京都公安条例第一条にもとづき、別紙申請書記載のとおり、右集会及び集団示威運動の許可を申請したところ、被申請人は同月七日付をもつて、別紙不許可通知書記載のとおり右集会及び集団示威運動を全面的に禁止する不許可処分をなした。

二、本件処分の違憲、違法性

(一)表現の自由は、民主主義社会の根幹をなし、憲法の保障する基本的人権のうちで最も重要なものであるから、仮にこれを制約することが不可能ではないとしても、いやしくもその本質を阻害することがあつてはならず憲法が検閲を禁じている趣旨から見ても、事前の抑制は原則として許されないものといわなければならない。

もつとも、集会等の集団的行動については、それが開催される場所を必要とし、集団であるが故に交通の妨げになる可能性があるという点から、言論、出版の自由と異り、特別の規制に服せしめる必要性は否定できないとの見解があるが、仮にかかる見解を是認するとしても、「表現の自由」の重要性に鑑み、これに対する規制はあくまで必要最少限度にとどまらなければならない。

この点につき昭和二九年一一月二四日最高裁大法延判決が示した原則は厳格に維持されるべきものと考える。

本件処分の根拠となつた集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例いわゆる東京都公安条例第三条第一項は、許可基準について集団示威運動等の実施が「……公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合の外はこれを許可しなければならない」と規定するが、これが右最高裁判決のいう合理的でかつ明確な基準といえるだろうか。もとより右文言は抽象的には極めて妥当である。しかし公安委員会という一行政機関が事前に許否を決定するうえでの明確な基準となりうるには余りに具体性に乏しいといわざるをえない。そもそも「直接危険を及ぼすと明らかに認められる」という規定は英米法における「明白かつ現在の危険」の理論にならつたものと考えられ、当事者主義の下における厳格な訴訟手続に従つた事後の刑事司法手続において用いる基準としてはそのままでも権利保障の機能を果しうるものといえよう。しかし、このような手続的保障のない事前の行政的取締の基準としては、右理論適用の指針が具体的に示されることが必要であり、治安維持を任とし、その観点からの取締にのみ走りやすい公安委員会警察官がなす許否の判断基準としては、そのままではあまりに抽象的で濫用される余地が十分ある。

よつて、この規定そのものが、憲法上特に重要な表現の自由に対する規制としては、必要最少限度のものとは到底いいがたく、憲法上の権利を侵害するものとして違憲無効たるを免れない。

三、本件処分の違法性

仮に右規定が合憲であるとしても、本件処分は東京都公安条例第三条第一項にいう「公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合」または「公共の秩序又は公衆の衛生を保持するためやむを得ない場合」になされたものとは到底いい得ない。

(1) 即ち、本件集会及び集団示威運動の参加団体である日本社会党、北区護憲、原水禁、日本婦人会議、北新会、社青同は、いずれも所謂社会党系の団体である。

即ち、日本社会党は国会第二党の公党であり、北区護憲は憲法擁護国民連合の北区地域組織であり、原水禁は社会党系原水爆禁止運動組織であり、日本婦人会議及び北新会は、いづれも婦人団体であり、社青同は社会党の青年運動組織である。

右の団体は、いずれも日本国憲法擁護、反戦平和を目的とする民主的かつ平和的団体であつて、従来より違法行為がなく、逮捕者を出したことも殆んどない。

しかも、本年に入り同地区において、同じ目的で開催された社会党系の北区労働組合連合会(二月二〇日)及び東京護憲連合(三月八日)主催の集会及び集団示威運動は、いづれも東京都公安委員会により申請通り許可せられ、いずれも平穏裡に終了している。

しかも当日の参加予定者数は壱千名にすぎず、人数の点よりみても「公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合」に当らないことも明白である。

むしろ、後述のごとく東京都民及び北区住民の大多数の意思である米軍野戦病院設置反対の本件集会及び集団示威行進を全面的不許可とする本件処分のほうが、都民及び北区住民の反感を煽り立て、公共の安寧を害する行動に走らせる危険性をひめているというべきである。

(2) さらに、王子野戦病院設置に関していえば、昭和四三年三月二八日には北区議会の全員一致をもつて、又同年三月八日の東京都議会においては圧倒的多数をもつて病院設置中止の決議がなされている。

このように、東京都議会及び北区議会において右のごとき決議がなされていることは、民主主義社会にあつては、東京都民及び北区住民の大多数の意思の表明とみるべきもので、その決議の上に立つて、本件のごとき野戦病院の設置反対の集会及び集団示威運動をなすことこそ「公共」の意思の表明というべきものであり、したがつて本件集会及び集団示威運動が「公共の安寧」に危害を与えることはありえない。

(3) 以上のごとく、参加団体の性格、人数及び過去の行動実績からみても、また本件集会及び集団示威運動の行なわれる客観的状況よりみても、所謂「明白かつ現在の危険」は何等存しないこと明らかである。

四、しかるに、本件集会及び集団示威運動は前記制限によつて、右行動が制約され、これによつてうける損害は回復しがたいものといわざるをえない。

申請人が、本件集会及び集団示威運動の責任者として、又自らも右行動に参加するものとして、本執行停止の申立に及ぶ次第である。

疎明方法(省略)

別紙三

意見書

意見の趣旨

本件申立てを却下する。

申立費用は申立人の負担とする。

との裁判を求める。

意見の理由

第一本件申立てに係る処分手続の経過

申立人の代理人遠藤衛男は、昭和四三年四月三日午後五時ころ、警視庁王子警察署警ら交通課警備係に出頭し、相手方委員会に対して、申立人が主催者となつて、同月八日に行なう集会、集団示威運動の許可を申請した。

そこで、相手方委員会は同月六日午前一一時委員長堀切善次郎、委員高木寿一、委員安西浩が出席して臨時委員会を開き、右申請にかかる集会、集団示威運動の許否を議したが、右申請にかかる集会、集団示威運動の実施は、後述のとおり公共の安寧を保持するうえに直接危険を及ぼすと明らかに認められることから、「集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例(昭和二五年七月三日東京都条例第四四号)」第三条第一項本文に基づき、これを許可しないこととし、同月七日午後五時二五分警視庁王子警察署警ら交通課長友利松助をして申立人にこの旨を示達した。

第二申立人の申請にかかる集会、集団示威運動を不許可とした理由

一 米陸軍王子病院設置反対の集団行動について

ベトナム野戦病院反対連絡会議、社会党北総支部、北区労働組合連合会、東京地区反戦青年委員会連絡会議(東京反戦青年委員会)、日本婦人会議北支部、原水爆禁止北区民会議、全学連(反代々木系)等の団体による米陸軍王子病院設置反対の集団行動は、昭和四一年中に五回、同四二年中に四回催されているが、昭和四三年に入るとその数は急激に増加し、二月に五回、三月に一八回が行なわれた(別紙一参照)。

そして、その行動も次第に激しさを加え、とくに二月二〇日以降は、三派系、革マル系などの反代々木系の学生団体がこの運動に対して意欲的、組織的に参加するに至つて、集団行動は極めて過激、かつ、違法なものとなつた。

すなわち、マル学同中核派、社学同および社青同解放派で組織するいわゆる三派系全学連および革マル系全学連は、本年に入つてから米陸軍王子病院開設反対闘争を九回もつたが、このうち、七回は他の団体の主催する集会、集団示威運動に参加して行動し、

(一) 二月二〇日に行なわれた北区労働組合連合会主催の「米軍野戦病院設置反対、春闘勝利北区労連総決起大会」に参加した三派系および革マル系全学連など反代々木系の学生約八七〇名は、行進順路沿いに所在する王子本町派出所および在所中の警察官に向つて石を投げ、またはあらかじめ準備した角材を振つて打ちかかるなどの集団的暴力行為を敢行し、もつて警備中の警察官一二名に負傷させ、付近居住の真山フク子方ほか多数の商店のウインドガラス、シヤツター、窓ガラス等を損壊した(疎乙第一号証)。

(二) 二月二七日に行なわれた北部ブロツク地区反戦青年委員会主催の「米軍王子野戦病院開設阻止北部ブロツク地区反戦青年委員会総決起集会」に参加した革マル系全学連、社学同、社青同、反戦高協など約四三〇名は、ジグザグ行進をして道路を占拠し交通をと絶させたほか、国鉄王子駅および王子駅前派出所付近で警備にあたつていた警察官に対して歩道敷石を砕いて投げ、または角材で打ちかかるなどの集団的暴力行為を行ない、もつて警察官五〇名、通行人一名(中学生)に傷害を与え、付近居住の猪瀬勝弘ほか多数の商店出入口のガラス戸等を損壊して乱入したりした(疎乙第二号証)。

(三) 三月三日に行なわれた東京反戦青年委員会主催の「王子ベトナム野戦病院開設阻止全都青年総決起集会」に参加した三派系全学連約三六〇名は、道路一ぱいになり角材を林立させて行進し、交通をと絶させ、歩道の敷石を砕き、これを警備中の警察官に向かつて投げつけ、または角材を振つて突撃し、その行為を警察官に制止されると付近民家の庭内、敷地内、屋根の上はもとより、雨戸を壊して室内に土足のまま逃げ込むなどの違法行為を行ない、もつて警察官八名、一般通行人二名に傷害を与え、付近居住の長能トミ子方ほか多数の商店の出入口ガラス戸、ウインドガラス、陳列台、ジユークボツクス、自動秤、温度計、野菜、卵等の商品、屋根瓦等を損壊した(疎乙第三、四号証)。

(四) 三月八日午後三時三〇分ころ、反代々木系学生団体の学生は角材を振りかざして一気に米陸軍王子病院へ突入を図り、同病院の窓ガラス数十枚を破壊し、さらに同日行なわれた憲法擁護東京都民連合主催の「北区野戦病院開設反対都民集会」に参加し、角材を林立させて道路を占拠して交通をと絶させ、王子本町派出所および警備中の警察官に対して、あらかじめ用意した劇物クロルピクリン、目つぶし用唐がらし、胡椒末を投げつけ、または現場道路歩道の敷石を砕いて投げつけ、角材を振つて打ちかかるなどして荒れ狂い、もつて、警察官七二名、および通行人三名に傷害を与え(通行人中の一名は左眼失明)、さらに付近所在の小倉病院ほか多数の商店、住宅の板戸、ガラス戸、垣根、万年塀、雨樋、瓦、看板灯などを損壊した(疎乙第五、六、七、八、九号証)。

(五) 三月二八日午後三時三〇分ころ、中核派は、同派の学生約四〇〇名に角材を持たせて国鉄王子駅前から王子本町派出所付近にかけて陽動させ、その間に別動隊約五〇名を、米陸軍王子病院に隣接する都営住宅敷地内から同病院塀をのり越えて侵入させ、もつて、同病院の窓ガラス五九枚、ドア一七枚などを破壊させたほか、同日行なわれた東京反戦青年委員会主催の「三・二八王子野戦病院設置反対青年総決起集会」に他の反代々木系学生団体とともに参加して、国鉄王子駅前付近および明治通りにおいて激しいジグザグ渦巻きデモ行進をくり返して交通をと絶させ、これが警備にあたつた警察官および警察署、派出所に対して、歩道敷石を砕いてこれを投げつけ、角材を振りかざして打ちかかるなどの集団的暴力行為を行ない、もつて、警察官三一四名、通行人六名に傷害を与えたほか、さらに国鉄王子駅の駅舎、現場付近に所在する映画館、パチンコ店およびその他多数の商店、住宅等のシヤツタードア、広告板、スチール写真掲示場、出入口戸、窓、電話ボツクス、信号灯等を損壊した(疎乙第一〇、一一、一二号証)。

(六) 四月一日行なわれた東京反戦青年委員会主催の「北区米軍野戦病院設置反対青年集会」に参加した反代々木系学生団体の学生約六〇〇名は行進順路にあたる国鉄王子駅前から王子本町派出所前を経て国鉄十条駅方面に通ずるいわゆる十条通りおよび米陸軍王子病院方面に通ずるいわゆる王子新通り等において、おりから同所付近で警備中の警察官に対して、歩道敷石を砕いて投石し、角材を振りかざして突撃して警察官三七六名、通行人六名に傷害を与え、さらに王子本町派出所を襲つて同派出所の建具放送施設、通信機等を放火焼燬して同派出所の機能を停止させるとともに、音無橋上において、パトロールカーを襲撃して同車をてん覆炎上させるなど集団的暴力行為を恣にし、よつて、通行人榎本重之が路上に転倒して死亡する事故をひき起こしたほか付近所在の吉本病院その他商店、事務所、住宅などのシヤツター、出入口戸、窓ガラス、看板、屋根瓦、木戸、塀、自動車、雨樋等多数を損壊した(疎乙第一三号証乃至第二〇号証)。

このように、米陸軍王子病院付近においては、反覆して過激な集団的暴力行為がくり返され地元の被害が続出し(別紙二参照)婦女子を疎開させる者も出る有様(疎乙第二一号証)なので地元の北区議会は、三月二九日の本会議において、三派系全学連の集団暴力を排除し、住民の平和と安全を守るため万全の措置を講ぜられるよう要請するという趣旨の「法秩序の維持確立に関する意見書」を可決採択し、相手方委員会に対して通報しているのである(疎乙第二二号証)。

二 申立人の申請にかかる集会、集団示威運動に三派系全学連が参加し集団的暴力行為が反覆される蓋然性について

(一) 日本社会党北総支部、北区労働組合連合会、日本婦人会議北支部および北進会、東京反戦青年委員会、原水爆禁止北区民会議等々は、昭和四一年三月ころ、ベトナム野戦病院反対連絡会議を結成して米陸軍王子病院の開設反対運動を行なつていたが、本年二月になつて反代々木系学生団体との共同闘争の是否をめぐつて分裂したので、この共同闘争を容認する立場にある社会党北総支部、東京反戦青年委員会、北区労働組合連合会等三〇数団体は、本年三月二三日新たに王子野戦病院反対共闘会議を結成し、申立人をその議長としたのである。

申立人は、このような経緯で結成された団体の議長であるから、その主催する本件集会、集団示威運動に北区反戦青年委員会のみならず、他地区の反戦青年委員会が参加すること、従つて反戦委員会と共闘関係にある三派系全学連、革マル系全学連が参加することは当然予定しており申立人もこれを認めているのであるが、これら反代々木系学生団体が参加した場合に、これを統制することができないことは、前記各例に徴しても明らかなところであり、この点についても申立人自身認めているところである。

(二) 一方、革マル系全学連は(疎乙第二三、二四、二五号証)、「四、八王子抗議闘争に決起しよう」と申立人の主催する本件集会、集団示威運動に積極的に参加することを呼びかけ、また三派系全学連は、王子野戦闘争を四月中の闘争目標と定めて、四月一日、同八日、同一一日の集団行動に参加することを呼びかけており組織的にこれに参加するとしているのである(疎乙第二六、二七号証)。

(三) 以上のとおり、本件集会、集団示威運動の参加団体である反戦青年委員会は、唇歯輔車の間にある反代々木系学生団体と共同闘争を組んでおり、反代々木系学生団体が本件集会、集団示威運動に参加することは明らかである(疎乙第二八号証)。そして、主催団体はこれを受け容れる意向であるのに、これを統制することを得ないのであるから、本件集会、集団示威運動を申請どおり許可し、現場に多数人が集合した場合には、反代々木系学生団体がこれを利用して集団的暴力行為に出るであろうことは火を見るよりも明らかなのである。

三 本件処分の適法性について

憲法第二一条に規定するいわゆる「表現の自由」が侵すことのできない基本的人権に属し、その完全な保障が民主政治の基本原則の一つであることは他言を要しない。しかしながら、国民はこの自由を濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負うべきことも論をまたないところである。

すなわち、国民は、この自由の権利を使用することにより、同胞を害し、または社会公共の利益を危険にすることは許されないのである。

集会、集団示威運動というも、これが暴力行為および犯罪の煽動に利用されるに至つては権利の濫用として排斥されること論をまたない。

前記のごとき反代々木系学生団体の集団的暴力行為によつて醸成されている米陸軍王子病院周辺の最近における異常な情勢は、公共の社会生活に対する侵害、住民一般の精神的平穏感、安全感に対する侵害であることは明らかである(疎乙第二九号証乃至第三九号証)。

従つて、反代々木系学生団体が参加して集団的暴力行為を反覆することが明らかな本件集会、集団示威運動の実施を公共の安寧を保持するうえに直接危険を及ぼすと明らかに認めて行なつた相手方委員会の本件申立人の許可申請に対する不許可処分は適法妥当なものである。

第三付言

集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例は、形式上許可制という形をとつているが、その実質は届出制と異なるところがないという。しかしながら、条例は、許可申請にかかる集団行動を特定の場合には禁止し、または条件を付することが許されている点で届出制の範ちゆうに属するものとはなし難いのである。してみれば、かりに相手方委員会の行なつた本件不許可処分を当裁判所が違法であるとして取消した場合においても、相手方委員会がその趣旨に従がつた行政行為をするまでは、申請にかかる集会、集団示威運動について当然許可があつたとすることはできないはずである。何となれば、かかることを認めることは、行政について責任を負う立場にない裁判所が裁判の名において積極的に行政行為をするということを認めることになるからである。

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